ロボット手術「ダビンチ(da Vinci)」について

ロボット手術「ダビンチ(da Vinci)」について

手術支援ロボット「ダビンチ」とは

患者さまへの負担が少ない低侵襲の鏡視下手術(腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術)に、ロボット機能を組み合わせたのが「ダビンチ」です。

「ダビンチ」は3つのユニットで構成されており、これまで不可能とされていた角度からの視野の確保と鉗子の細密な動きで、複雑な手術を可能にしました。

ダビンチ3つのユニット

戸田中央総合病院が埼玉県内で初めて「ダビンチ」を導入

戸田中央総合病院は、2012年11月に埼玉県内で初めて手術支援ロボット「ダビンチ(da Vinci)サージカルシステム(以下、ダビンチ)」(米国Intuitive Surgical社)を導入し、泌尿器科でのロボット支援手術を開始。2016年には、ダビンチを用いた腎臓がんの部分摘出手術を県内で初めて行いました。(埼玉新聞に掲載。記事詳細は➡こちら

現在は、消化器外科において「大腸がん(直腸がん・結腸がん)」「先天性胆道拡張症」、泌尿器科において「前立腺がん」「腎がん(腎細胞がん)」「膀胱がん・腎盂尿管移行部狭窄」の手術を施行し、実績を重ねています。

ダビンチによるロボット支援手術

ロボット手術の特徴

傷口が小さい

手術に必要なのは0.5~1.5cmほどの小さな穴で、5~7か所程度です。切除部位を取り出すために、そのうちの1か所だけ4cm程度に広げることがあります。ロボット支援手術の傷口

手術中の出血量が少ない

「ダビンチ」の動きは精緻で止血も効果的にできるため、輸血が行われた例は少数です。

術後の疼痛が少ない

傷口が小さいため、痛みを軽減できます。

回復が早い

体への負担が少ない分、術後の回復が早く早期の社会復帰が望めます。

術後の合併症のリスクが低い

「ダビンチ」の鉗子の動きは、柔軟で緻密で正確です。病変部に的確にアプローチできるため、組織の損傷や合併症を抑えられます。

ロボット手術で期待できること

術野が立体的で広く、鮮明

立体的な3Dモニターで術野を10倍に拡大して見られるため、細部の手技が正確に行えます。執刀医自身が患者さまの体内に入って手術をしているようだと言われるほど、視界が良好です。ダビンチの3Dモニター視野

人の指先以上の動きを実現

「ダビンチ」の鉗子は、手首以上の可動域と、柔軟でブレない確かさを持ち、指先に勝る細かな動きを可能にしています。ダビンチの鉗子

手術中の執刀医の負担を軽減

手ブレ防止機能や、座って手術が行えることで、執刀医の負担を軽減。長時間、高い集中力を必用とする手術の正確性を高めます。

訓練を受けた医師のみが操作

「ダビンチ」は、関連学会が推奨するトレーニングを受けた医師のみが操作できます。戸田中央総合病院には4名の医師が在籍し、「ダビンチ」での手術にあたります。さらに、当院には十分な経験と実績により指導医として認定されたプロクター2名が在籍しています。

ロボット手術対応疾患(健康保険適用)

戸田中央総合病院では、下記の疾患に対して「ダビンチ」によるロボット支援手術を導入しており、健康保険が適用されます。

泌尿器科

  • 前立腺がん
  • 腎がん(腎細胞がん)
  • 膀胱がん
  • 腎盂尿路移行部狭窄

消化器外科

肝胆膵外科

年度別ロボット手術実績

(単位:件)
2017 2018 2019 20202021
前立腺がん 51 73 61 4140
腎がん(腎細胞がん) 14 11 15 1112
膀胱がん 3 1 53
腎盂尿路移行部狭窄 11
合計6587775856

消化器外科医よりメッセージ

外科・消化器外科部長
榎本 正統
Masanobu Enomoto

PROFILE
1999年東京医科大学卒業、外科学第三講座に入局。2021年11月東京医科大学 消化器・小児外科学分野准教授に就任。2022年10月戸田中央総合病院 外科・消化器外科部長に就任。

学会認定資格
  • 日本外科学会専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会外科専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定取得者・ロボット支援手術プロクター
  • 日本ロボット外科学会専門医 ほか

戸田中央総合病院では、大腸手術に対して健康保険適応で「開腹手術」、「腹腔鏡手術」、「ロボット支援下手術」のいずれの選択も可能です。
どのような方法で手術を行うかということはあくまで「手段」であり、重要なのは「方法」と「結果」です。しかし、選択肢が少なければよりよい「手段」を選ぶことはできません。
当院は大腸手術において、それぞれの患者さまにとって最もよいと思われる手術方法をご提案できます。
私は東京医科大学病院で2013年からロボット支援下手術に携わり、日本ロボット外科学会の専門医、日本内視鏡外科学会のロボット支援手術プロクター(手術指導医)として、大腸がんに対するロボット支援下手術および後進への手術指導を行ってきました。
2022年10月から、大腸疾患に対するロボット支援下手術を普及させるために当院に赴任し、ロボット支援下直腸手術、ロボット支援下結腸悪性腫瘍手術を行っています。

大腸がんに対するロボット手術の利点・欠点

開腹手術や腹腔鏡手術よりも精緻な操作が可能であるため、肛門機能、性機能、排尿機能を温存できること、余裕をもってがんを切除できることが利点です。準備に時間を要するため、手術時間がやや長くなることが欠点です。

どんな大腸手術でもロボット手術は可能か

ほとんどすべての直腸切除手術で、ロボット支援下手術を健康保険適応で行うことができます。腹腔内に癒着がある方、高度肥満の方、高度浸潤がんの方などでは安全性、根治性を優先し、開腹手術などをお勧めする場合があります。結腸について健康保険適応があるのは、現時点で結腸悪性腫瘍手術(がんの手術)のみです。
開腹手術や腹腔鏡手術にも有用性がありますので、戸田中央総合病院ではそれぞれの方の病状に応じて、最も適切な手術方法をご提案します。

今後の展望について

現在、戸田中央総合病院では直腸手術の90%以上をロボット手術で施行しており、今後その割合はさらに多くなることが予想されます。結腸がんでもメリットが大きい手術については、ロボット手術を積極的に行っていく方針です。

埼玉新聞に榎本医師が掲載されました

2023年12月25日付の埼玉新聞(地域10面)に、当院主催の市民公開講座の様子が掲載されました。
外科・消化器外科部長 榎本正統医師による講演「大腸がん~ロボット手術と抗がん治療の最前線」の内容や会場の模様が掲載されておりますので、ぜひご覧ください。記事詳細は➡こちら

泌尿器科医よりメッセージ

泌尿器科部長
飯田 祥一
Shoichi Iida

PROFILE
1997年旭川医科大学卒、2009年東京女子医科大学大学院修了。2014年東京女子医科大学泌尿器科助教。2015年4月当院泌尿器科を担当し、同年6月当院泌尿器科部長に就任。

学会認定資格
  • 日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医・指導医
  • 日本透析医学会専門医
  • 日本臨床腎移植学会腎移植認定医
  • 手術支援ロボットダビンチCertificate取得
  • 医学博士

泌尿器外科治療を中心とした地域医療に携わり、北海道北見市・千歳市の民間病院で従事したのちご縁があって2015年に当院泌尿器科に入職いたしました。
前立腺がん、腎がんに対するロボット手術に助手から術者へと経験を重ね、並行して後進者の育成に取り組んでおります。

費用について

戸田中央総合病院では前立腺がん、腎がん(腎細胞がん)、膀胱がん、腎盂尿管移行部狭窄、大腸がん、先天性胆道拡張症に対して「ダビンチ」によるロボット支援手術を施行しており、いずれも健康保険適用となります。

入院・手術に関わる費用は年齢や年収、健康保険制度によって異なりますので各診療科へお問い合わせください。

戸田中央総合病院への受診について

医療機関の方へ(患者さまご紹介・ご相談など)

かかりつけの先生方と当院とで連携がとれるよう適宜対応いたしますので、地域医療連携課へお問い合わせください。

患者さまの状態が安定した際は、紹介元医療機関(かかりつけ医)へ逆紹介させていただきます。

患者さま紹介・ご相談
(地域医療連携課)

戸田中央総合病院「地域医療連携課」へお問い合わせください。

外科・消化器外科

戸田中央総合病院「外科・消化器外科」ご紹介です。

肝胆膵外科

戸田中央総合病院「肝胆膵外科」ご紹介です。

泌尿器科

戸田中央総合病院「泌尿器科」ご紹介です。

【お問い合わせ電話番号】
平 日 8:30~19:00 048-442-1431(地域医療連携課 直通)
土曜日 8:30~13:00
上記以外の時間 0570-01-1114(代)※救急受付

患者さまへ(当院・当科に初めて受診される方)

初診は、“戸田中央総合病院あて”の紹介状が必要です。
かかりつけ医により専門的な治療が必要と判断された場合は当院あての紹介状をご用意の上、お電話にてご連絡いただきますようお願い申し上げます。

【お問い合わせ電話番号】
 0570-01-1114(代)
 ※音声ガイダンスに従って番号を選択してください。

【電話対応時間】
 平日:8:30~17:00/土曜:8:30~13:00
 ※休診日は除きます。

関連診療科

「ダビンチ」の機能

「ダビンチ」は3つのユニットで構成されています。ダビンチ3つのユニット

①サージョンコンソール

「ダビンチ」のすべての働きをコントロールする司令塔。
術者は座った姿勢で3Dモニターを見ながら、両手両足を使ってコントローラーを操作します。
ダビンチのサージョンコンソール

②ペイシェントカート

3本の鉗子を取り付けるアームと内視鏡カメラを取り付けるアームからなります。サージョンコンソール(①)を動かすと、その手の動きがコンピュータを通してペイシェントカート(②)に取り付けられた手術器具に伝わり、遠隔操作で手術を行います。ダビンチのペイシェントカート

③ビジョンカート

術野を照らす光の調整とカメラからの画像情報の収集・処理を行い、鮮明な3D画像を術者に送ります。ダビンチのビジョンカート

よくある質問

安全性はどうなのでしょうか?
2012年12月から2023年9月までに当院で施行したダビンチ手術702例のうち、ダビンチの不具合による術式変更は1例もありません。ダビンチは予期せぬ動作を感知すると危険回避のために停止する設計となっております。
また、手術に携わるスタッフは認定資格を取得し、熟練した技術を持っております。緊急時にも対応できるよう日々技術を高める訓練を積み、安全管理の徹底を図っております。
“ロボットに手術される”と考えると少し怖いです。
ロボットが手術を行うのではなく、ロボットはあくまでも医師の技術をサポートする役割。医師がロボットを活用し、より精度の高い手術を可能にしたのが「ダビンチ」による手術です。
「ダビンチ」手術は誰でも受けられますか?
年齢制限はありません。高齢の方でも、一般的に開腹手術、鏡視下手術に耐えられる状態であれば可能です。 ただし、病状や既往歴などにより「ダビンチ」が適用できない場合もあります。当院では担当医師が患者さんと十分に話し合って、術式を決めさせていただきます。
お問い合わせ先
0570-01-1114