腎臓内科(腎センター)
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「末期腎不全の治療(腎代替療法)」
慢性腎臓病が進行し末期腎不全になると、健康を維持していくために「腎代替療法」が必要となります。
腎センターでは、「透析療法(血液透析・腹膜透析)」「腎移植」を含むすべての選択肢について、患者さま一人ひとりの生活スタイルや価値観に合わせた治療の提案と支援を行い、医療チームによる総合的なケアのもと、安心して治療を受けていただけるよう環境を整えています。
About
末期腎不全の治療「腎代替療法」とは
「腎代替療法」は、人工的に体の血液を浄化する「透析療法(※)」と、健康な腎臓を移植する「腎移植」があり、さらに透析療法には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります(図1)。
※透析療法
機能が低下した腎臓に代わって血液中の余分な水分や塩分、老廃物などを除去し、血液を人工的にきれいにする治療法

腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)それぞれの特徴
どの腎代替療法を選ぶかによって治療内容や生活の制約が異なり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
腎代替療法 | 血液透析 | 腹膜透析 | 腎移植 | |
しくみ | 血液を体の外に取り出し、透析器を通して余分な水分や老廃物を除去してから体に戻す![]() | 透析液をお腹の中に入れ、自身の腹膜を利用して血液中の余分な水分や老廃物を除去する | 働きの低下した自分の腎臓の代わりに他の人の腎臓を移植![]() | |
【CAPD】 1日数回、 透析液バッグを交換 ![]() | 【APD】 就寝中に透析液を 機械で自動交換 ![]() | |||
生活の制約 | 週3回、1回4時間程度の通院治療 | 1日数回のバッグ交換、1回2~10時間程度(腎機能の状態による) ※月1-2回程度の通院あり | ほとんどない ※定期通院あり(頻度は経過・状況による) | |
治療場所 | 病院・クリニック | 自宅・職場など | 病院(手術時、外来通院)・自宅(内服治療) | |
食事・飲水の 制限 | 多い(蛋白・水・塩分・カリウム・リン) | やや多い(水・塩分・リン) | 少ない | |
入浴 | 透析後はシャワーが望ましい | 腹膜カテーテルの保護必要 | 問題ない | |
スポーツ | 自由 | 腹圧がかからないようにする | 移植部保護以外、自由 | |
旅行・出張 | 旅行先等での透析施設の確保 | 透析液・装置の準備 | 自由 | |
治療に必要な 手術の内容 | バスキュラーアクセス(※)作製 (小手術・局所麻酔) ※血液を取り出し、戻すための血管 | 腹膜透析カテーテル(※)挿入(中規模手術) ※体内に埋め込むチューブ | 腎移植術 (大規模手術・全身麻酔) | |
メリット | ▪医療スタッフによる管理 ▪日本で最も実績のある治療法 | ▪在宅治療で、血液透析に比べて自由度が高い・血圧の変動が少なく、尿量が維持されやすい | ▪透析による束縛からの精神的・肉体的解放 | |
デメリット | ▪バスキュラーアクセスの問題 (閉塞・感染・出血・穿刺痛・ バスキュラーアクセス作成困難) ▪除水による血圧低下 | ▪腹部症状(腹が張る等) ▪カテーテル感染、異常 ▪腹膜炎の可能性 ▪腹膜の透析膜としての寿命がある(5~8年位) | ▪免疫抑制薬の副作用 ▪拒絶反応などによる腎機能障害、透析再導入の可能性 ▪移植腎喪失への不安 |
Hemodialysis
透析療法【血液透析】
血液透析のしくみと特徴
血液を体の外に取り出し、透析器を通して余分な水分や老廃物を除去してから体内に戻す治療法
透析場所 | 病院・クリニック |
透析時間 | 1回につき約4時間 |
通院回数 | 週3回程度 |
- 医療スタッフによる治療・管理のもとで通院透析
- 治療開始後、尿が出なくなるなど腎臓の働きは比較的早期に失われる
- 手首近くの腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて血管を太くする(内シャント)手術が必要
腕の血管(バスキュラーアクセス)に針を刺し、ポンプを使って血液を体の外に取り出します。その血液を透析器(ダイアライザ)に循環させ、血液中の過剰な水分や塩分、老廃物などを除去し、体の中に戻します。


血液透析の週間スケジュール例
午前透析
(月・水・金の午前 / 70代の例)
透析治療は午前に集中
午後の時間は自由に過ごす
🌇 午後透析
(火・木・土の午後 / 60代の例)
用事を済ませて午後に透析
治療のない日はパート勤務
🌃 夜間透析
(月・水・金の夜間 / 50代の例)
フレックスタイムや時短勤務で
仕事帰りに透析治療
人工透析室
Peritoneal Dialysis
透析療法【腹膜透析】
腹膜透析のしくみと特徴
透析液をお腹の中に入れ、自身の腹膜を利用して血液中の余分な水分や老廃物を除去する治療法
腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の過剰な水分や塩分、老廃物などを透析液に移動させます。移動後、透析液を体外に取り出すことで血液浄化が行われます。

- 在宅透析による治療
- 透析液を出し入れするためのチューブ(腹膜透析カテーテル)をお腹の中に埋め込む手術が必要
- 透析液の交換やカテーテルとの接続は、患者本人または家族が行う
透析場所 | 自宅・職場など |
透析時間 | 1日数回、1回2-10時間程度 ※腎機能の状態により異なります。 |
通院回数 | 月1~2回程度 |
腹膜透析の種類
腹膜透析には、透析液の入ったバッグを1日数回交換する「CAPD」と、就寝中に透析液を機械で自動交換する「APD」があります。透析の回数・時間は、腎機能の状態によって患者さまごとに異なります。
当院では、腹膜透析の遠隔モニタリングシステムを導入しています。 医療スタッフがご自宅での治療状況を確認・把握しておりますので、在宅透析が不安な方でも適切な治療を行えるようサポートいたします。 |
患者さまの生活に寄り添った「オーダーメイド透析」をご提案
患者さまの生活スタイルによって、確保できる治療時間や負担は異なります。当院では患者さまやご家族と相談しながら、一人ひとりの病状やご事情に合わせて透析の方法・時間・回数をきめ細かく設定し、生活の質(QOL)の向上をめざした“オーダーメイド”の透析治療をご提案・サポートいたします。
CAPDとAPDを組み合わせた腹膜透析や、血液透析を併用したハイブリッド透析も対応可能です。
※下記の例はごく一部です。患者さまの病状や生活スタイルによって異なります。
1日の生活サイクル例 ① CAPDのみ(1回2時間×4回)

1日の生活サイクル例 ② CAPD(1回2時間)+ APD(6時間)

Support
透析サポート
戸田中央総合病院のトータルケア
慢性腎臓病の治療では、腎臓内科の専門医を中心に、医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、管理栄養士、理学療法士など、多職種の医療スタッフがチームとなり、末期腎不全からの透析導入、維持透析、緊急時の入院治療まで、幅広く対応できる設備と体制を整えています。
透析療法は、長くお付き合いしていく治療です。専門医による質の高い診療はもちろん、患者さまが安心して日常生活を送れるよう、さまざまな角度からサポートいたします。
バスキュラーアクセスの作製・修復、シャントPTA(狭窄や閉塞を改善する血管内治療)などバスキュラーアクセスに関わる管理と治療を行います。急性シャント閉塞など緊急トラブルにも対応可能です。また、医療スタッフが定期的に状態を確認し、狭窄や閉塞等の早期発見と予防に努めています。 |
透析を行っていると、さまざまな症状や合併症を引き起こすことがあります。腎センターでは他診療科の専門医と連携し、合併症の治療にあたります。入院治療も可能です。また、合併症を早期発見するため、定期検査(レントゲン・心電図・血液検査)のほか、必要に応じて専門的な検査も院内で迅速に行うことができます。 |
水分や塩分、カリウム、リンなどの摂取が制限される透析患者さまにとって、食事の管理は大変重要です。採血結果などのデータに基づき、管理栄養士が患者さま一人ひとりに合わせた食事療法をご提案します。 |
透析患者さまは、慢性疾患の治療や腎不全に伴う合併症の予防・治療のために複数の薬を服用していることが多く、服用方法も複雑です。薬を安全に、適正に飲んでいただけるよう薬剤師が服薬に関する指導や支援を行っています。 |
腎不全は足への血流不良が起こりやすくなるため、レーザーによる血流計などを用いて定期的にチェックし、爪切りや日常生活におけるフットケア指導などを行っています。足の異常に対する早期発見と重症化予防に努めています。 |
透析中の運動は、身体機能や生活の質の改善に効果があるとされています。希望者には、理学療法士によるストレッチや筋力トレーニングなど、患者さまの病状を考慮しながら、安全なリハビリテーションを行っています。 |
■スタッフの主な保有資格
医師 | 日本透析医学会専門医・指導医、日本腎臓学会専門医・指導医 |
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看護師 | 腎代替療法専門指導士、透析看護専門看護師、レシピエント移植コーディネーター |
臨床工学技士 | 透析技術認定士、血液浄化専門臨床工学士、認定血液浄化関連臨床工学士 |
薬剤師 | 腎臓病薬物療法認定薬剤師、腎臓病療養指導士 |
理学療法士 | 腎臓リハビリテーション指導士 |
透析の送迎をご希望の方へ
通院透析が困難な方や、車いすをご使用の患者さまには、当院グループ施設である「戸田中央腎クリニック」をご紹介いたします。ご自宅からクリニックまでの通院を無料送迎でサポートいたします。
戸田中央腎クリニックについて詳しく見る(外部サイト「戸田中央腎クリニック」に移動します)
Kidney Transplant
腎移植
働きの低下した自分の腎臓に代わって他の人の腎臓を移植
腎臓の機能が低下した人に、新たに腎臓を移植する手術を行い腎不全の治療を行う方法です。
腎移植について詳しく見る(準備中)
Choice
治療の検討
腎代替療法選択外来
当院の腎臓内科を受診されている慢性腎不全の患者さまとそのご家族を対象に、「腎代替療法選択外来」を設けています。
「腎代替療法選択外来」では、ご自身に合った治療法を選べるよう正しい知識や情報を丁寧にご説明し、病気や生活上の悩みを一緒に考え整理していきながら、安心して治療に臨めるようサポートいたします。
- 腎代替療法に関する情報提供
- 腎臓病の進行度や合併症に合わせた療養生活指導
- 現在や今後の日常生活、治療法の選択における悩みの相談
医師からのメッセージ

戸田中央総合病院
腎センター長 兼 腎臓内科部長
井野 純 Jun Ino
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
- 日本透析医学会専門医・指導医
- 日本腎臓学会専門医・指導医
- 日本腎臓リハビリテーション学会腎臓リハビリテーション指導士
- 日本腎代替療法医療専門職推進委員会腎代替療法専門指導士
- 多発性嚢胞腎協会PKD認定医
当院腎センターの腎代替療法に対する取り組み
慢性腎臓病の治療では、腎機能を可能な限り維持することが第1の治療目標ですが、残念ながら徐々に腎機能が悪化し、腎臓の働きを賄うための腎代替療法の必要性が現実に迫ってくることがあります。
そんなとき、当院の腎センターでは3つの腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)について十分にご説明したうえで、患者さまの生活スタイルや価値観を尊重し、医療スタッフも一緒に考えながら治療選択を支援しております。そして、どの治療を選択しても、準備から導入、外来通院までを一貫して行えるのが当院の利点です。例えば、透析では専門の医療チームが患者さま一人ひとりの症状や状況に合わせて安全かつ最適な方法をご提案し、治療を進めてまいります。
また、高度な医療技術を要する腎移植に関しては、当院の泌尿器科・移植外科とタッグを組み、移植前後の透析の管理も行っております。
当院の透析室は、通院で透析を行う外来部門と、肺炎、骨折、虚血性心疾患、消化器系疾患などの治療を目的とした入院透析を行う入院部門に分かれています。外来は患者さま自身で通院可能な方に限られますが(※)、病状が不安定になりやすい入院部門では、入院診療科と協力しながら、共に早期回復・退院をめざすことをモットーとしております。
今後の高齢化社会における医療に求められる患者さまの声にスタッフ一同耳を傾けながら、引き続き腎代替療法の選択サポートと透析室における安全な治療の遂行をめざしてまいります。
※通院透析が困難な方や車いすをご使用の患者さまには、近隣のグループ施設「戸田中央腎クリニック」のご案内も可能です。
Medical Expensesn
透析治療の費用の目安
透析治療にかかる費用は、1ヵ月あたり外来血液透析で約40万円、腹膜透析で30~50万円程度と言われています。高額な費用がかかりますが、自治体の医療費助成制度を利用することで自己負担を大幅に軽減することも可能です。経済的な負担を減らし、安心して治療を続けていただくために公的制度の活用をぜひご検討ください。
※上記金額はおおよその目安です。治療内容、年齢、年収、健康保険制度によって異なります。
※都道府県や市区町村などによって名称やサービス内容などが異なります。詳しくは、お住まいの自治体にお問い合わせください。
当院の腎臓内科を受診されている慢性腎不全の患者さまを対象に、ソーシャルワーカーによる情報提供や申請サポートも行っています。 |
腎臓病に関する情報サイト
一般社団法人全国腎臓病協議会(外部サイトに移動します)
医療費のほか腎臓病に関するさまざま情報が掲載されておりますので、ご参考にしてください。
※一般社団法人全国腎臓病協議会は、すべての腎臓病患者の医療と生活の向上を目的として結成された透析患者を中心とする腎臓病患者の組織です。
Consultation
受診について
まずは「かかりつけ医」にご相談ください
現在治療を行っている医療機関の主治医(かかりつけ医)にご相談ください。
主治医が当院での診療が必要と判断した場合は「戸田中央総合病院 腎臓内科」宛の紹介状(診療情報提供書)をご用意いただき、お電話にてご予約をお願いいたします。
医療機関の方からの患者さまご紹介・ご相談は連携課へ
「地域医療連携課」で承ります。かかりつけの先生方と当院とで連携がとれるよう適宜対応いたします。
Image by macrovector on Freepik, イラストAC
